皇国晴酒造

みくにはれしゅぞう

『幻の瀧・巌瀬』『まぼろしのたき・いわせ』

富山県黒部市生地【蔵元:岩瀬新吾 杜氏:岩瀬由香里】

「いやあ、いらっしゃい」と満面笑みを浮かべた若い岩瀬社長と名水しか飲まないというワンちゃんが迎えてくれます。皇国晴酒造のある黒部市生地はまわり一帯日本有数の湧水地域です。日本名水百選の湧水群があるのです。そして蔵の敷地にも、天然の浄化作用で塩素や鉄分の含まない柔らかで甘露な水をふきだす井戸を持っています。その水で仕込まれた、皇国晴酒造の酒はなんともサラリときれいな仕上がりです。

2022年から蔵元の奥様、由香里さんが「杜氏」に就任し、富山県内初となる女性杜氏となりました。皇国晴酒造の伝統を重んじながらも、新しい視点からの酒造りにも挑戦されておられます。

手ごろな価格で大吟醸や純米酒を供給していこうとする蔵の姿勢にも、正直な蔵元魂を感じて心地よいです。岩瀬蔵元は、吟醸蔵のスタイルを残しながら、米のポテンシャルを最大限生かした酒造りも心がけています。

何より面白いのは、造りの時に蔵の中に三味線の音を流してみているとのこと。モーツァルトを流す蔵元の話は聞いたことがありますが、三味線とは??バチの音が癒しになって味が繊細になるような気がするとか・・・

キレのあるすっきりとした日本酒がお好みの方はぜひご賞味ください。

林酒造場

はやししゅぞうじょう

『林・黒部峡』『はやし・くろべきょう』

富山県下新川郡朝日町【蔵元:林洋一 杜氏:林秀樹】

林酒造場は、北アルプス朝日岳の麓、ヒスイ海岸で知られる景勝の地で寛永3年(1626年)酒造りを始めました。富山県の酒蔵では一番古く、「加賀藩境関所跡に銘酒あり」と言われた由緒ある酒蔵です。
蔵の北側はすぐ海です。南側と言えば山の麓に家は無く生活排水に汚染されくこともない完璧な立山の雪解け水が自噴しています。空気はすがすがしく、その自然で清冽な水が仕込み水。余りの綺麗さにお酒もどれもこれも綺麗になってしまうのが嬉しさと悩みの種とか?贅沢な悩みです。確かにお酒は雪解け水の様に綺麗です。

酒蔵を訪ねると、いつも陽気で素敵な笑顔の蔵元と奥様が出迎えてくださいます。お酒も、ご夫婦のようにおおらかで切れが良い。

最盛期は、3,000石を売る大きな商いをしておられましたが、そんな林社長曰く、「やはりこれからは量より質だよ。量を飲んで満足する酒は、大手にまかせ、私たち地方の中小の酒蔵は、地方ならではの特色、食文化を生かし、自分でこだわった、造りたい酒をこれからは造っていきたい・・・。また、消費者を飽きさせないためにも、前と同じもの造ってはいけない、常に毎年毎年進歩し続けなければ!そして、他の酒類に負けない美味しさを追求するためにも、僕たちの日本酒造りは、積み重ねのチャレンジなんだよね!」と仰られていました。

数年前に杜氏として修行から戻られた秀樹杜氏。お父さんとは打って変わって、寡黙なタイプです。まだ若い杜氏でありながら、今では富山県内でも指折りの「全国鑑評会金賞受賞の請負杜氏として注目されています。直近8年間連続で金沢国税局新酒鑑評会において優等賞を受賞し、実家の酒造りに参画してから10年間で4度の「全国新酒鑑評会」にて金賞を受賞。

富山県で最注目杜氏と言えるでしょう。その中でも「林シリーズ」は一度は飲んでいただきたいお酒です。日本酒業界でも珍しく「酒米」ごとに商品が分かれていて、年間を通して沢山の種類の酒米の「林」がリリースされます。ただ、「林シリーズは、ECサイトに買い物かごろつけてないけない約束」となっています。残念ですが、ご入用の方はぜひなかやす酒販にいらしてください。

福鶴酒造

ふくつるしゅぞう

『風の盆・福鶴』『かぜのぼん・ふくつる』

富山県富山市八尾町【蔵元:福島淳】

古い歴史を守り、文化の香り高い坂の街八尾。門前町であり、飛騨と越中を結ぶ要所。土蔵造りや格子戸に古風な趣が漂っています。

風を治め五穀豊穣を祈る「風の盆」の祭りがあり、21歳以下の黒法被の男と編み笠の女の踊りは微妙に風と調和し、腰のしなりや手の動きが観る者たちを興奮させてくれます。この八尾町の坂の中腹に福鶴酒造があります。
風に酔い唄に酔い、そして美味い酒「福鶴」に酔う。香りと味のバランスの良い吟醸タイプのお酒が中心です。山の中腹にある蔵だが、水は中軟水で海の水の様に爽やかでキレイ。

全ての酒造りを終えてから最後に、富山県で唯一の「JAS認定有機米コシヒカリ」で仕込む純米があります。

玉旭酒造

たまあさひしゅぞう

『玉旭・おわら娘』『たまあさひ・おわらむすめ』

富山県富山市八尾町【蔵元:玉生貴嗣 杜氏:嶋 光国】

夏が過ぎて心なしか暑さも落ち着いた頃、おわらの町越中八尾はにわかに賑わいを見せます。情緒豊かで優雅な歌と踊りの祭り「風の盆」が始まります。街は「風の盆」一色になり3日間酔いしれる。酒の名「おわら娘」は、手塩にかけて育てた娘を嫁がせて幸せになってほしいが、嫁にやらずにいつまでもおわらを踊っていてほしいという願いの物語。そして風の盆が終わると静かに秋がやって来ます。

その街に「玉旭」があります。

蔵の歴史は富山県内でも2番目に古く、ゆうに200年を超えています。

常願寺川水系の綺麗な水から淡麗辛口と一言では言い表す事の出来ない旨みのある酒ができあがります。

玉生蔵元、嶋杜氏に蔵を案内していただきました。玉生蔵元と共に、“顔の見える酒造り”“地元に根付いた本物の地酒としての玉旭”というコンセプトの元に、山田錦・五百万石・雄山錦など、県内産の酒米を中心に使用した酒造りにこだわり、二人三脚で頑張っておられます。

八尾の山中に自社で無農薬のお米を栽培し、そこから出来たお米で酒を醸した新しい表現を持った酒母搾り日本酒「マザー」や「エコーズ」などをリリースするなど、いつも挑戦的で芯の通った酒が出来上がっています。

特に長い間蔵の歴史と共に歩んできた、県産米の雄山錦には、お二人とも大変思い入れが強く、これまでの酒造りの中で培ったデータを生かし、純米酒としての雄山錦のもつポテンシャルを最大限に引き出そうと、ボディのある生酒タイプ、そして味がのって後ギレの良い熟成タイプの二種類を使い分け、新しい市場を開拓したい!そんな熱意を肌で感じました。

桝田酒造店

ますだしゅぞうてん

『満寿泉』『ますいずみ』

富山県富山市東岩瀬町 蔵元:桝田敬次郎  杜氏:堂目穣(能登流)

明治38年、富山市東岩瀬町で創業。蔵元名の一字「桝」に縁起良く「寿が満ちる泉」と当て字し、長寿の酒を意味する「満寿泉」と命名しました。

まだ吟醸酒が一般市場で認められてなかった昭和40年代半ばから蔵元の桝田敬次郎氏と、能登四天王の一人と謳われた三盃幸一前杜氏がハイリスクを承知で吟醸酒に取り組み、今では「吟醸酒といえば満寿泉」と誰からも認められるようになりました。

綺麗であるが、味のしっかりしたうまいお酒を醸しています。

現社長の桝田隆一郎氏に魅了された若き経営者たちが、蔵が所在する岩瀬浜に集まり、一大観光ができています。 旅におすすめの酒蔵の一つです。

富美菊酒造

ふみぎくしゅぞう

『羽根屋・富美菊』『はねや・ふみぎく』

富山県富山市百塚【蔵元杜氏:羽根敬喜】

富山県の東西の人達は、1つの県民性では表せない微妙な性格の違いを見せます。

それは呉羽山(丘陵)が県を二分してきた事によって生まれたものかもしれません。呉羽山を境に、富山県の水が違う。東は軟水、西は硬水。杜氏といえば東は越後杜氏が中心で、西は能登杜氏が中心。呉羽山はその中庸を行くということでしょうか…

そんな呉羽山の麓に、この富美菊酒造があります。

「普通の酒造りも大吟醸の造りの様に」と、原料米の処理から給水などほとんどの工程を丁寧に丁寧に手作業で行っています。

なかやす酒販は手作業でさえあれば良いお酒が出来るとは全てで考えていませんが、そこに良い酒を醸したいという渾身の努力と情熱が注がれたら、出来るお酒が良い酒になる事を信じています。

羽根敬喜氏が蔵元杜氏になって、確実に素晴らしいブランドとなりました。杜氏は年齢だけでない自信と誇りに満ちた顔つきです。

そんな杜氏が過日、なかやす酒販を訪ねてくれました。そこでの話の中で互いに確認した事があるのです。なかやす酒販の求めるもの、それは・・・「ワインではフィネス。日本酒では余韻とキレ」この事に、羽根杜氏は共感してくれたのです。

「富美菊」シリーズは伝統的な酒を醸し、限定流通の「羽根屋」ブランドは日本酒の可能性に挑戦するお酒だということです。

※『羽根屋』について・・・
『羽根屋』は古くからの富美菊酒造の屋号であり、苗字でもあります。

特定名称酒クラスのみの品揃えで、信頼関係で結ばれている特約店のみに流通する限定流通品です。造りは、少量生産、限定吸水など、大吟醸の造りに用いられる醸造方法をすべての酒で行っています。そのため、一度に醸造される生産量が非常に少なく限りがあります。それでもこの造りで羽根屋を生み出したい羽根夫妻が取ったやり方。それが「四季醸造」でした。一度に仕込む量が少ないなら、1年に何度も仕込む(普通の酒蔵は冬に1度だけしか仕込みません)。1年中酒を醸し続けることは、何倍も何十倍も大変な作業です。それでも、羽根夫妻の命をかけた挑戦が今の羽根屋を生み出しています。

その名の響きのように、軽やかに柔らかく、優しい酒。翼の飛翔するが如く、呑む人の心が浮き立つような日本酒として存在したいという願いを込めています。
“日本酒の限りない可能性を模索し、挑戦し続ける・・・”
至高の酒質を目指す絶え間ない革新。それが「羽根屋」のポリシーです。

三笑楽

さんしょうらくしゅぞう

『三笑楽・魂KON』『さんしょうらく・こん』

富山県南砺市上梨 蔵元:山崎洋  杜氏:山崎英博 

合掌造りで知られる五箇山。こきりこ節、麦屋節など民謡の宝庫。加賀藩の煙硝製造場であり、流刑の地でもあったという奥深い秘境の山里。そこに澄み切った自然に抱かれて銘酒三笑楽は育まれています。

 

「三笑楽のいわれ」それは、中国は晋の時代。ある僧が二度と里に戻るまいと誓って山にこもり、30年有余年経ったある日のこと。2人の友人が庵を訪ねて来て、3人は共に酒を酌み交わし語り合った。友の帰路を見送るうち、僧が里との境である虎渓をいつの間にか渡ってしまい、それに気付いた皆は大笑いした。三笑楽は、この故事に基づく謡曲「三笑」から「酒は笑って楽しく呑んでほしい」という思いで名付けられました。

古来より豪雪地特有の雪崩から集落を守るために、守り継がれてきたブナ原生林の谷間から湧き出す清らかで豊かな伏流水で仕込まれた三笑楽のお酒は、全体に芳醇辛口、山菜等アクの強い料理にも負けないコクと、酒を飲まねばはじまらん!という風土に鍛えられた量を飲めるように、すっきりとした喉越しが特徴です。

山の幸の味覚で三笑楽に舌鼓を打ち、四季折々に山の魅力に惑わされてみるのもいやー、快いものです。

三笑楽の酒造りを取り仕切るのは、能登流の山﨑英博杜氏。富山地酒の「山の酒」を背負う大変期待されている人物です。非常に穏やかで、心優しい方なのですが、酒造りに懸ける情熱・想いは、人一倍強く、意外にも負けず嫌いな一面も…。

酒造りは「一麹(いちこうじ) 二酛(にもと) 三造(さんつくり)」とよく言われ、一番神経を使うのが麹造りです。麹は酒母、もろみにいれて米のデンプンを糖化していく役割を果たします。そして2番目に神経を使うのが、酒母造り。酒母は蒸し米、水、麹に酵母を加えたものでもろみの発酵を促す酵母を大量に培養したもの。三笑楽の造りは「旨味を凝縮させた濃厚さが売りです。他にも、時代やニーズに合わせて、たくさんのアイテムを持っています。

厚みのある酒を望む方に是非おすすめの酒蔵です。

若駒酒造

わかこましゅぞうじょう

『若駒』『わかこま』

富山県南砺市(井波町)井波【蔵元:清都邦夫】

井波町は木彫工芸と瑞泉寺の門前町として600余年栄えてきました。

小京都と言われ、美しく落ち着いた木の香りが漂う古い家並みと石畳の道が瑞泉寺まで続き、あちこちから、トントンと槌の音が聞こえてきて木彫の街の雰囲気を盛り上げています。若駒は高岡市戸出にあった酒蔵「横綱」から分家した酒蔵で、兄弟蔵には「勝鬨(現在醸造していません)」「勝駒」があり、娘婿の「北一(現在醸造していません)」も兄弟とすれば清都一門はずいぶん富山県の酒造りに貢献していることになります。

庄川水系の水は、地下10メートル位掘っただけで溢れるほど出て来る水量。ですので、酒造りに最適。裏の土蔵は、年間を通して低温(定温)なために造りにも保存にも役立ち、飲み口のすっきりした「八乙女」はなかなか味わい深いお酒です。

ラインナップは辛口純米、天に届かんばかりに凛々しく描かれた馬が特徴の吟醸「天馬」がフラッグシップです。どのお酒も八乙女同様に軽快な辛口に仕上げています。

最近、人気を博している「弥久びきゅう」も注目です。生酒のまま低温貯蔵で寝かしたお酒で、若駒のすっきりとした味わいに、まろやかさと優しさが楽しめます。

成政酒造

なりまさしゅぞう

『成政』『なりまさ』

富山県南砺市舘【蔵元:山田雅人】

戦国時代、医王山の麓で佐々成政が山中で水がなく、槍で突くと水が出たという伝説の水「槍の先の湧水」を仕込み水に使うことから「成政」の名がつきました。

福光は「食い倒れの街」といわれ、吟醸酒の消費比率も高くそういった食通たちからも高い支持を受けています。酒の肴には、ドジョウの蒲焼きや飛龍頭(丸揚げ)などがピッタリ来るようです。まさに里の酒と言えます。

成政酒造はここ近年、きれいで柔らかな口当たりの酒を目指しており、昔ながらのゴツくてどっしりしたタイプよりも飲みやすいお酒が多くなってきています。

現代の食事に合せやすくなっていますので、おすすめの酒蔵です。

この福光町は棟方志功の愛した街としても知られています。

立山酒造

たてやましゅぞう

『銀嶺立山』『ぎんれいたてやま』

富山県砺波市中野【社長:岡本泰明】

文久元年(1861年)創業。通好みの辛口のお酒を醸します。

生産量、知名度どちらも富山県でトップの酒蔵で、全国でも有名な酒蔵です。

「酒は立山しか飲まない!」と言う多くのファンを引き付けており、近年、日本酒は世界に向けて発信されてきています。切れの良いうまい酒を提供し続けています。

水はカリウムを含んだ庄川の伏流水、造りは山廃で手間をかけて造ることを基本としています。今までは、本醸造(昔は、二級酒と呼ばれていました)を中心に、普段飲みのお酒が中心でした
が、最近は酸の効いた旨みのある純米や純米吟醸、高級酒米「愛山」を使用した大吟醸や特別純米も醸造しています。

そして濁り酒も造っていて、富山県最大手でありながら、トレンドをしっかりと捉えて、常に進化が止まらず、新しい挑戦に目が離せない酒蔵です。どのお酒も基本的に、透明感があり洗練されています。飲み飽きすることなくスルスルと飲めてしまう酒、素直な食中酒としてナンバーワンかもしれません。

富山県の雄としての風格と落ち着きが漂っています。