車多酒造

しゃたしゅぞう

『天狗舞』『てんぐまい』

石川県白山市坊丸町【蔵元:車多一成】

「天狗舞を飲んではじめて酒の旨味がわかった」
どんな賞よりも、お客様のその一言が至上の喜びです。それぞれの蔵には追い求めるものがあります。それは蔵にとってどうしても捨てられない根幹をなすものです。天狗舞が追い求めるものは“飲んで旨い酒を、熟練の蔵人が醸す、本物の酒造りの伝承”ということです。しかし、現在、熟練した蔵人の数は少なくなっています。過去から現在へと継いできた技を、そして酒造りの喜びを、私たちは次代へ継承してゆきたいと思います。天狗舞は加賀の自然と人が造るのですから。

杜氏は若手に技を伝授します。しかし、ただ単に教わるだけでなく、技を盗み、守り、壊し、新しい伝統を創ってほしいと願っています。酒造りは奥が深く、蔵人たちは数年がかりで酒造りの入口に立ち、また幾年もの歳月をかけて酒造りを理解してゆかねばなりません。社員である前に“職人”でなければ、技を継ぐことはできません。私たちは、人が自然とともに酒を醸す蔵です。それを忘れずに連綿と酒造りを続けてゆきたいと思います。酒造りの喜びを追い求めて・・・・・・・。(車多酒造公式HPより引用)

■これを呑まずして、やはり山廃は語れない『天狗舞』

ロンドンで開催されるIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)純米酒部門でトロフィー(Goldメダル受賞酒中の最高位)を何度も受賞した純米酒・山廃造りの代名詞とも言われる天狗舞の看板商品!山廃仕込み特有の濃厚な香味と酸味の調和がとれた個性豊かな純米酒や、米の旨味を充分に引き出す、天狗舞独自の山廃酒母造りで醸された、芳醇でさばけのよい「美しき旨し酒」の風味を堪能できる純米吟醸がおすすめです。

天狗舞ならではの芳醇な味わいをごゆっくりお楽しみください。

菊姫合資会社

きくひめごうしがいしゃ

『菊姫』『きくひめ』

石川県白山市鶴来新町【蔵元:柳 達司】

菊姫を語る上で、やはり避けて通れないのが“山廃仕込み”と呼ばれる伝統の技。一般的に多くの酒蔵さんで行われている速醸仕込みは、酸が柔らかく口当たりが良い味わいが特徴で、酒母が出来上がるまでにおよそ2週間。一方、この山廃で仕込まれたお酒は、酒母が出来上がるまでに4週間と倍の時間が必要となりますが、酸の効いた濃厚な旨みが特徴のお酒に仕上がります。菊姫では、酒質の目標を明確に打ち出し、この2つの酒母を使い分けているそうです。

「大吟醸は大吟醸、純米は純米と製品をきっちりと造り分ける。そして、それが常に普通にできる安定感。例えお米の出来が悪くても、これまでの酒造りの中で培った豊富なデータを上手く生かすのが菊姫の強み。」と、蔵人は熱く語っておられました。また、その語り口は、歴史の重さ、そして菊姫という看板を背負った誇りを強く感じさせるものでした。

松浦酒造

まつうらしゅぞう

『獅子の里・鮮』『ししのさと・せん』

石川県加賀市山中温泉【蔵元杜氏:松浦文昭】

石川県加賀市山中温泉にある、松浦酒造は、安永元年(1772年)の創業。

山中温泉の中心街に利き酒やお土産などをお買い求めいただける直営店があり、そこから歩いて5分位のところに蔵があります。一昔前、町全体が全焼する大火があり、蔵も焼失。その教訓を生かし、蔵と直営店を別々に建てたとのことでした。また、山中温泉ではその昔、宿に内湯が無かった頃、湯治客を町の中央にある湯座屋まで案内する湯女(ゆな)がおり、彼女たちのことを「獅子」と呼んでいました。湯治客の浴衣を頭からかぶって待っている姿が獅子に似ていたため、そのように呼ばれていたそうです。

蔵を案内していただいたのは、蔵元で杜氏でもある松浦文昭さん。物腰も柔らかく、大変謙虚な方ですが、ユーモアがあって、ちょっとロマンチストな一面も(笑)。そんな松浦さんは、元々家業を継ぐつもりはなかったそうですが、大学卒業後、気持ちが一変・・・。家業を継ぐことこそが自分の運命!と決め、全国の酒蔵さんで蔵人として修行されました。その修行された蔵の中には、あの十四代の高木酒造さんが!今でも高木さんとは交流があり、「高木さんは、僕にとって酒造りにおける、“心の師匠” なんです。」と、話しておられました。

看板商品でもあり、数多くの著名人にも愛飲されている、活性清酒の『鮮』はぜひ一度飲んでください。今となっては数多く市場で目にする活性タイプの日本酒ですが、おそらくこの『鮮』がその奔りといっても過言ではありません。そんな口当たりの柔らかい上品な甘さと心地よい発泡感が特長の『鮮』ですが、シャンパンと同じ瓶内2次発酵で、出荷するまでに6ヶ月間、3~4℃の冷蔵庫で熟成させます。この3~4℃というのがミソで、あまり温度が低すぎると、酵母が死滅してしまい、逆に温度が高すぎると、酵母が働きすぎてしまうとのこと。瓶内2次発酵という、発売当初の頃はかなり珍しかった活性清酒を世に送り出すなど、大変研究熱心な松浦さん。実は酵母の培養もされており、以前はアルプス酵母などの香り系の酵母も使用されていたこともありますが、これからは香りが控えめな金沢酵母にこだわっていきたいとのことでした。その理由として挙げられるのが、松浦さんがこだわる “食中酒”としてのお酒。香りの強さは料理を邪魔すると考えておられ、例えば、十四代の高木さんは、一杯飲んで満足する酒を目指して造っておられますが、松浦さんは、料理から一歩下がって、口に運んだときに料理にそっと寄り添うようなお酒を目指して造っておられます。確かに獅子の里は、どれを飲んでもお酒が主張することなく、あくまで料理を引き立てる “名脇役的な存在”。まさに松浦さんの人柄がそのままお酒にのり移ったかのようです。また、貯蔵にもこだわっておられ、お酒は基本的に無濾過。そして純米吟醸以上は全て一回火入れの瓶燗・瓶貯蔵。高木さんに習い、瓶詰めまでの時間を短縮し、フレッシュ感と少しガス感を残すことで酸化しにくいお酒になるそうです。確かに近年の獅子の里は、後ギレの良さに、プラス!フレッシュな心地よいお米の旨みが感じられるお酒になっています。

蔵の隅々から、仕込み水に使っている裏山の湧水場まで、丁寧に丁寧に時間をかけて案内してくださった松浦さん、本当に本当にありがとうございました。

数馬酒造

かずましゅぞう

『竹葉』『ちくは』

石川県鳳珠郡能登町【蔵元:数馬嘉一郎】

『竹葉(ちくは)』醸造元 数馬酒造は、明治2年(1869年)創業。江戸時代より、味噌・醤油の醸造を生業としておられましたが、その仕込み水が酒造りにも適していたことから、酒造りも始められました。(現在は地元の学生たちと、味噌や醤油の製造も再開されました)。

また、「竹葉」という名前の由来は、仕込み水に使っていた笹川の上流に生い茂る笹の葉に因んだものであり、また古来より「竹葉」は酒の別称として呼ばれていることも命名の由来とのこと。(こちらは“ちくよう”と呼びます)

蔵の目と鼻の先に宇出津漁港があり、醸造蔵の3階からは、富山湾の雨晴海岸からとはひと味違った、立山連峰の壮大な容姿を眺めることもできるそうです。(こんな場所で仕事ができるなんて、何とも羨ましい限りです!)

蔵を案内して頂いたのは、数馬嘉一郎蔵元。ズバリ!酒造りのモットーは・・・の質問に、応接室に飾られた額縁を指差し、「米を磨き、蔵を洗う。心を磨き、酒を醸す。」

これは、出来る限り良い原料を高精白で、清潔な環境の中でみんなが笑顔で楽しめるお酒を醸したいという、先代の想いが込められているとのこと。いろいろお話をしている最中のお二人も、作業をしておられる従業員の皆様も本当に笑顔♪このアットホームな雰囲気が、ほっとどこか心を落着かせてくれるお酒を醸す理由なのかもしれません。

目指すお酒の味わいは「食中酒として飲み飽きしないお酒。」もうこれ以上飲めないと思っていても、なぜか自然と手が伸び、もう1杯が飲めるお酒。本醸造以上の特定名称酒はもちろん、燗にしても旨い普通酒も同等にそうあって欲しいと願っておられました。

また、話の中で、実は以前、なかやすの店の前を通り過ぎようとした、近くに住むおばあちゃんが、“あんたの店、竹葉置いとんがけ。私、若いときにお医者はんから、体調子悪いんがやったら、竹葉飲まれ!ゆうて言われたことあんがいぜ。”と話されたことをお尋ねしてみると、昔、目の前の宇出津港から船で高岡までお酒を運んでいたことがあるとのこと。(数馬さんといい、宗玄さんといい、何かしら富山にご縁があるようです)

白藤酒造店

はくとうしゅぞうてん

『奥能登の白菊』『おくのとのしらぎく』

石川県輪島市鳳至上町【蔵元杜氏:白藤喜一】

とっても笑顔が素敵な白藤ご夫妻。この若い夫婦が力を合わせて酒造りをしています。生産量はかなり少ないですが、いつか沢山の人に支持され、立派な蔵になることは間違いありません。

1722年に海鮮問屋として創業された老舗ですが、いつの頃からか酒蔵になり、今のオーナーで9代目だそうです。言葉は控えめで穏やかな優しい蔵元ですが、酒造りに対する自信と意欲は並々ならぬものがあります。

若奥様は農大で醸造学を究めてきた才媛。蔵では「麹屋」と言って、麹造りを担当しています。酒造りに麹は一番大切な課程です。その心臓部を若奥様が担っています。彼女は、大学の学科を選択するのに、醸造を選んだのは「微生物の世界は平和に見えたから」だそうです。人間と平和に共存できそうだから選んだそうです。芯のある一面を見せてくれました。

仕込み水はすぐ裏にある山の湧水を使用。能登沖の震災で水質が変わらなかったのかと聞いてみましたが、金沢大学の先生の調査でも問題ないということでした。試飲と一緒に出てきた水は、柔らかく(軟水)甘味すら感じるまろやかな味でした。これならお酒が美味くなるわけです。

この蔵の特徴として挙げられるのが、純米吟醸の量が他の蔵と比べてとても割合が多いということです。なぜかと聞きましたら、白藤酒造店の純米吟醸は他の蔵と比較して、特別個性があるから需要も多いとのことでした。確かに辛口仕立てでありながら上品な甘さがマスクされていて飲む人を心から魅了してしまうお酒ではあります。

成る程ですね。上品な甘味を持った綺麗で優雅な酒です。このあたりが酒造りのプロから絶賛される蔵の所以でしょうか。

宗玄酒造

そうげんしゅぞう

『宗玄』『そうげん』

石川県珠洲市宝立町【蔵元:徳力 暁 杜氏:坂口幸夫】

『宗玄』醸造元:宗玄酒造は、明和5年(1768年)創業。

日本を代表する四大杜氏(越後・南部・但馬・能登)のひとつとして認知されている能登杜氏発祥の蔵とも言われており、奥能登最大の酒蔵として、地元をはじめ、石川県内・全国の左党にも愛され続けています。また、昔は船で富山までお酒を持ち運んでいた歴史があったり、高岡市内には、宗玄姓を名乗る宗玄家から分家された方がおられたりと、何かと富山には結びつきの強い酒蔵でもあります。

宗玄酒造は、山田錦100%の本醸造や純米、純米吟醸、大吟醸などの小仕込みの特定名称酒を醸す「平成蔵」と、地元に根強いファンが多い普通酒を中心に醸す「明和蔵」の二つで構成されています。

一般的に宗玄というお酒は“甘口の代表酒”というイメージを強く持たれている方が多いかもしれません。確かに地元では肉体労働者の方が多く、へしこや漬物など、比較的塩辛い食べ物を好まれていたために甘口のお酒が主流でしたが、平成10年以降は、一部の四段仕込みの普通酒を除き、時代の変化(特に食事)とともに、口当たりの柔らかい辛口系のお酒に徐々に変わってきています。

能登の伝統を受け継ぎ、しっかりと守りながらも、時代の変化に合った美酒を醸し続ける宗玄酒造。これからも能登杜氏発祥の地に恥じない“宗玄酒”を私達に提供してくださるに違いありません。

■奥能登を代表する旨い酒『宗玄』

日本四大杜氏のひとつ、能登杜氏。名だたる名杜氏を輩出している杜氏集団としてご存知の方も多いと思います。農口尚彦研究所の農口杜氏、開運の故 波瀬杜氏、満寿泉の三盃杜氏など、数多くの銘酒を世に送り出し、確固たる地位を確立した立役者と言っても過言ではありません。そして、この偉大な杜氏の名声を引き継いだのが宗玄酒造の坂口杜氏ではないでしょうか。

全体のバランスが良く、味がしっかりのっていながらも、心地よいキレイな旨味を感じさせ、杯が進んでも全く飲み飽きしない酒質は、波瀬杜氏が醸していた開運と相通じるものがありました。是非新鮮な海の幸と楽しんでいただきたいお酒です。

吉田酒造店

よしだしゅぞうてん

『手取川・吉田蔵』『てどりがわ・よしだぐら』

石川県白山市安吉町【蔵元杜氏:吉田泰之】

創業150年となる吉田酒造店。数年前に代替わりした泰之蔵元が酒蔵のすべてを取り仕切っています。

この泰之蔵元。普通の蔵元とは全く違う感性の持ち主で酒業界に旋風を巻き起こしそうな予感です。伝統の格式を重んじる「手取川」シリーズ。昔ながらの技法をしっかりと守りながら現代に合う味わいに仕上げています。

そして、注目すべきは「吉田蔵」シリーズ。富山県内ではなかやす酒販が唯一の取り扱いとなっております。こちらは、革新的な挑戦を続けるシリーズです。すべての原料米を地元の契約農家とともに作り、仕込み水は白山の百年水を使用。醸造方法も昔からの伝統技法である「山廃仕込」で造られます。

手取川のお酒はどれもこれも綺麗なお酒です。スムーズで爽快。「どうだ、うちのお酒は旨いだろう!」って、押しの強い酒でなく、芯はあるけれど香りも控えめでお料理に寄り添うようなお酒です。

蔵訪問当日は吉田泰之蔵元自ら蔵を案内していただきました。近年、石川県内では飛ぶ鳥を落とす勢い!と評判の『吉田蔵』ですが、今回の訪問でその理由が分かったような気がします。

“なにより、細部へのこだわりが凄いっ!”のです。美味しい酒さえ醸していれば、後は大丈夫・・・ということではなく、酒は醸されて半分という考えから、その後の火入れ、貯蔵、流通における品質管理には、これでもか!というまで惜しみなく投資し、最新の注意を払っておられることに大変感銘を受けました。蔵の全てを隠すことなく(この大事な時期に麹室まで)見せていただき、これからも手取川の酒質は益々向上し、多くの日本酒ファンを魅了し続けることを確信したのは言うまでもありません。